このページは 2007年 09月 19日 08時58分52秒に巡回更新されました。 |
[引用サイト] http://www.tmg.gr.jp/hokensinpou/030301-zakotusinkeitu.html
坐骨神経痛とは臀部から大腿後面にかけて鋭い痛みを自覚する“症状”であり“病名”ではありません。整形外科外来で坐骨神経痛を訴える患者さんは、主に腰椎疾患の症状として、腰痛の次に多く見られますが、その原因となる疾患は様々です。今回は坐骨神経痛を来す疾患とその治療法についてお話ししたいと思います。 坐骨神経痛は末梢神経のなかで最も太く長い神経です。第4、5腰神経と第1〜3仙骨神経からなり、梨状筋の下を通って大腿後面を下行し、膝の裏で総腓骨神経と脛骨神経に分かれます。(図1)つまり坐骨神経痛は、神経が腰椎の隙間から出て骨盤をくぐり抜け、お尻の筋肉から顔を出す間のどこかで、圧迫や絞扼などの障害を受けた為に発症すると言えます。 年齢により異なりますが、若い人の場合最も多いのは、腰椎椎間板ヘルニア、次に梨状筋症候群が挙げられます。腰椎椎間板ヘルニアは比較的急激には発症し、ラセーグ徴候(図2)といって、仰向けの状態で下肢を伸展挙上すると坐骨神経痛が増強するのが特徴的です。ほとんどの場合、片側の坐骨神経痛が出現しますが、ヘルニアの位置や大きさにより両側に見られることもあります。梨状筋症候群は比較的緩徐に発生し、通常はラセーグ徴候が陰性となります。梨状筋間で坐骨神経が絞扼され、仕事や運動でストレスが加わり発症することが多いようです。比較的稀な疾患とされていますが、約10%の頻度で坐骨神経のバリエーションが存在する(図3)ことから、見過ごされていることも少なくないと思われます。一方、高齢者では変形性腰椎症や腰部脊柱管狭窄症などの変形疾患に多く見られ、また帯状疱疹により坐骨神経痛を発症する場合もあります。その他、年齢に関係なく特殊な疾患として、脊髄腫瘍や骨盤内腫瘍などが挙げられます。こういった腫瘍性の病変で坐骨神経痛を発症する場合は、痛みが非常に強く、保存的治療で治りにくいのが特徴です。 原因疾患に関わらず、まずは症状を緩和する対症療法が主体です。日常生活の指導→薬物療法→理学治療→ブロック注射の順で治療を進め、それでも痛みが軽減しない場合や歩行障害、麻痺といった他の神経症状を合併する場合に手術が行われます。 急激に発症する腰椎椎間板ヘルニアの場合、まずは安静が原則です。高齢者の変形性腰椎症や腰部脊柱管狭窄症などの場合、必ずしも安静が必要とは言えませんが、下位腰椎にかかる重荷を減らす目的で、長時間の座位姿勢を避けたり、コルセットを装着することも有用です。 非ステロイド性消炎鎮痛剤の内服薬や坐薬が主に用いられます。比較的長期間投与される場合が多いため、胃腸障害などの副作用に注意しながら使用します。また、腰脊柱管狭窄症では神経組織内での血流障害が原因の一つと考えられており、循環改善を目的としてプロスタグランディン(PG)製剤の内服や注射も用いられます 温熱治療としてホットパックや極超短波などが用いられます。腰痛を合併する場合に牽引療法もよく用いられていますが、治療期間を短縮するほどの効果が有るとは言えません。しかし、リラクゼーションという立場からも疼痛を軽減させる一つの手段であると考えて良いと思います。 腰部硬膜外ブロックと仙骨部硬膜外ブロックがありますが、外来では手技が容易で安全性が高い為に仙骨部硬膜外ブロックがよく用いられます。下位腰椎の疾患による腰痛や坐骨神経痛に効果が有りますが、薬剤が病変部に到達せず無効な場合も見られます。 腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の坐骨神経痛に対しても最も即効性のあるブロックです。治療だけでなく、疼痛の再現性を確認することにより、診断の一つにも用いられます。ブロック直後はほとんどの場合疼痛が消滅しますが、穿刺時の痛みが強く、神経根損傷の可能性も有るため、漫然と頻回に施行することはありません。神経根ブロックの著効例では、一度のブロックで数ヶ月以上の効果が得られ、その後再発もない症例も有りますが、無効例では局所麻酔薬の作用時間(約1時間)程度の効果しか得られません。 梨状筋症候群、帯状疱疹後神経痛などに対して用いられます。外来で容易に施行できますが、硬膜外ブロックや神経根ブロックに比べると穿刺部位の目印がはっきりせず、また坐骨神経痛の走行に個人差も有ることから、確実な効果を得ることはやや困難です。 各疾患に対して様々な手術法が選択されます。腰椎椎間板ヘルニアでは直視下あるいは内視鏡下にヘルニア切除術が行われ、いずれも良好な成績が期待できます。近年、レーザー椎間板切除術に対する期待が高まっています。レーザー照射で椎間板内の髄核を焼き空洞を作ることにより、内圧を下げて神経への圧迫を除きます。入院の必要もなく傷も残りませんが、保険適応が無く(自費で30〜50万円)すべての椎間板ヘルニアに適応が有るわけではありなせん。また、椎間板に生理食塩水や局所麻酔薬を注入して加圧することにより、ヘルニアを椎間板から脱出させ、椎間板の内圧を下げたり、椎間板の変性を促進させる治療も一部で始められています。腰部脊柱管狭窄症では神経の圧迫が多椎間にわたることが多く、ヘルニアのように小切開の手術やレーザーは適応になりません。術前から脊椎の不安定性が有ったり、手術で広範囲に骨や靭帯を切除する場合は金属や骨移植により脊椎を固定する手術も必要になります。 上記のような品質的な疾患が無くても坐骨神経痛が発症することが有りますが、この場合症状は1週間程度で自然に軽快することが多いようです。1〜2週間たっても軽快しない場合、激しい痛みが生じる場合、腰痛や下肢のシビレ、筋力低下などを伴う場合はすぐに整形外科を受診して下さい。その際はMRIの検査が可能な病院を受診することをお勧めします。 |